潮見台みどり幼稚園

TEL 044-976-1000 〒212-0013 川崎市宮前区潮見台6-1
教育方針

潮見台みどり幼稚園の教育

Ⅵ.参考資料

1.幼児期における遊び

 幼児期の生活のほとんどは、遊びによって占められている。遊びの本質は、人が周囲の事物や他の人たちと思うがままに多様な仕方で応答し合うことに夢中になり、時の経つのも忘れ、そのかかわり合いそのものを楽しむことにある。すなわち遊びは遊ぶこと自体が目的であり、人の役に立つ何らかの成果を生み出すことが目的ではない。しかし、幼児の遊びには幼児の成長や発達にとって重要な体験が多く含まれている。

 遊びにおいて、幼児が周囲の環境に思うがままに多様な仕方でかかわるということは、幼児が周囲の環境に様々な意味を発見し、様々なかかわり方を発見するということである。例えば、木の葉を木の葉として見るだけではなく、器として、お金として、切符として見たりする。また、砂が水を含むと固形状になり、さらには、液状になることを発見し、その状態の変化とともに、異なったかかわり方を発見する。これらの意味やかかわり方の発見を幼児は、思考を巡らし、想像力を発揮して行うだけでなく、自分の体を使って、また、友達と共有したり、協力したりすることによって行っていく。そして、この発見の過程で、幼児は、達成感、充実感、満足感、挫折感、葛藤などを味わい、精神的にも成長する。このように、自発的な活動としての遊びにおいて、幼児は心身全体を働かせ、様々な体験を通して心身の調和のとれた全体的な発達の基礎を築いていくのである。その意味で、自発的活動としての遊びは、幼児期特有の学習なのである。したがって、幼稚園における教育は、遊びを通しての指導を中心に行うことが重要である。 (平成20年7月 文科省「幼稚園教育要領解説」より抜粋)


2.幼児教育の意義及び役割

 この幼児期の発達の特性に照らした教育とは、受験などを念頭に置き、専ら知識のみを獲得することを先取りするような、いわゆる早期教育とは本質的に異なる。

 幼児教育は、目先の結果のみを期待しているのではなく、生涯にわたる学習の基礎を作ること、「後伸びする力」を培うことを重視している。

 幼児は、身体感覚を伴う多様な活動を経験することによって、豊かな感性を養うとともに、生涯にわたる学習意欲や学習態度の基礎となる好奇心や探究心を培い、また、小学校以降における教科の内容等について実感を伴って深く理解できることにつながる「学びの芽生え」を育んでいる。

 このような特質を有する幼児教育は、幼児の内面に働き掛け、一人一人の持つ良さや可能性を見いだし、その芽を伸ばすことをねらいとするため、小学校以降の教育と比較して「見えない教育」と言われることもある。

 だからこそ、幼児教育にかかわるに当たり、家庭や地域社会では、幼児の持つ良さや幼児の可能性の芽を伸ばす努力が求められる。また、幼稚園等施設における教員等には、幼児一人一人の内面にひそむ芽生えを理解し、その芽を引き出し伸ばすために、幼児の主体的な活動を促す適当な環境を計画的に設定することができる専門的な能力が求められる。

  このように、幼児教育は、次代を担う子どもたちが人間として心豊かにたくましく生きる力を身に付けられるよう、生涯にわたる人間形成の基礎を培う普遍的かつ重要な役割を担っている。

 また、学校教育の始まりとして幼児教育をとらえれば、幼児教育は、知識や技能に加え、思考力・判断力・表現力などの「確かな学力」や「豊かな人間性」、たくましく生きるための「健康・体力」から成る、「生きる力」の基礎を育成する役割を担っている。

3.子どもの育ちの現状

 近年の幼児の育ちについては、「基本的な生活習慣や態度が身に付いていない」「他者とのかかわりが苦手である」「自制心や耐性、規範意識が十分に育っていない」「運動能力が低下している」などの課題が指摘されている。また、小学校1年生などの教室において、「学習に集中できない」「教員の話が聞けずに授業が成立しない」など学級がうまく機能しない状況が見られる。

 加えて、近年の子どもたちは、多くの情報に囲まれた環境にいるため、世の中についての知識は増えているものの、その知識は断片的で受け身的なものが多く、学びに対する意欲や関心が低いとの指摘がある。

4.子どもの育ちの変化の社会的背景

 少子化、核家族化、都市化、情報化、国際化など我が国経済社会の急激な変化を受けて、人々の価値観や生活様式が多様化している一方で、社会の傾向としては、人間関係の希薄化、地域における地縁的なつながりの希薄化、過度に経済性や効率性を重視する傾向、大人優先の社会風潮などの状況が見られるとの指摘がある。

 このような社会状況が、地域社会などにおける子どもの育ちをめぐる環境や家庭における親の子育て環境を変化させている。さらには、このような変化に伴い、幼稚園等施設の教員等にも新たな課題が生じている。そして、これらのことが複合的に絡み合って、子どもの育ちに影響を及ぼしている要因になっているものと考えられる。

5.子どもの育ちをめぐる環境の変化 -地域社会の教育力の低下-

 第1に、地域社会などにおいて子どもが育つ環境が変化している。子どもが成長し自立する上で、実現や成功などのプラス体験はもとより、葛藤や挫折などのマイナス体験も含め、「心の原風景」となる多様な体験を経験することが不可欠である。しかしながら、少子化、核家族化が進行し、子どもどうしが集団で遊びに熱中し、時には葛藤しながら、互いに影響し合って活動する機会が減少するなど、様々な体験の機会が失われている。また、都市化や情報化の進展によって、子どもの生活空間の中に自然や広場などといった遊び場が少なくなる一方で、テレビゲームやインターネット等の室内の遊びが増えるなど、偏った体験を余儀なくされている。さらに、人間関係の希薄化等により、地域社会の大人が地域の子どもの育ちに関心を払わず、積極的にかかわろうとしない、または、かかわりたくてもかかわり方を知らないという傾向が見られる。

6.親の子育て環境などの変化 -家庭の教育力の低下-

 第2に、幼児教育が行われる一つの場としての家庭における子育てについても、その環境などが変化している。

 言うまでもなく、子育てとは、子どもに限りない愛情を注ぎ、その存在に感謝し、日々成長する子どもの姿に感動して、親も親として成長していくという大きな喜びや生きがいをもたらすものである。実際、子どもの成長が感じられたとき、子どもの笑顔を見たときなどに、特に喜びを感じるなど、自分の子育てに満足している親は半数を超えているとの指摘もある。

 このような子育ての喜びや生きがいは、家庭や地域社会の人々との交流や支え合いがあってこそ実感できるものである。

 しかしながら、一方で、核家族化の進行や地域における地縁的なつながりの希薄化などを背景に、本来、我が子を自らの手で育てたいと思っているにもかかわらず、子どもにどのようにかかわっていけばよいか分からず悩み、孤立感を募らせ、情緒が不安定になっている親も増えている。

 こうした状況の中、児童相談所における虐待に関する相談処理件数も増加している。

 また、女性の社会進出が一般的になり、仕事と子育ての両立のための支援が進み、子育てのほかにも、仕事やその他の活動を通じた自己実現の道が選択できる社会環境にある中で、子育てに専念することを選択したものの、そのような生き方で良いのか不安を覚え、子育ては「自分の人生にとってハンディキャップではないか」と感じてしまう親がいるとの指摘もある。

 一方で、物質的に豊かで快適な社会環境の中で育ち、合理主義や競争主義などの価値観の中で育った者が多い今の親の世代にとって、必ずしも効率的でも、楽でもなく、自らが努力してもなかなか思うようにはならないことが多い子育ては、困難な体験であり、その喜びや生きがいを感じる前に、ストレスばかりを感じてしまいがちであるとの指摘もある。

 また、経済状況や企業経営を取り巻く環境が依然として厳しい中、労働時間の増加や過重な労働などの問題が生ずる傾向にあり、親が子どもと一緒に食事を取るなどの子どもと過ごす時間が十分ではなくなっている。このことも親の子育て環境に影響を与えている要因であるとの指摘もある。

 このような子育て環境を改善し、家庭や子育てに夢を持てる社会を実現するため、現在、子育て支援の取組が行われている。

 しかしながら、その取組の結果として、親や企業の際限のない保育ニーズを受け入れ、単なる親の育児の肩代わりになってしまうことがあると懸念する声もある。この場合、特に低年齢児にあっては、人を愛し、人を信じる心など、人との関係性の根幹を形成する上で必要となる、信頼できる大人との1対1による絶対的な依存関係を確保することが難しくなり、子どもの健やかな成長にとって何らかの影響があるのではないかと懸念される。

 したがって、「父母その他の保護者が子育てについて第一義的責任を有する」という少子化対策における基本理念を踏まえ、親の育児を単に肩代わりするのではなく、親の子育てに対する不安やストレスを解消し、その喜びや生きがいを取り戻して、子どものより良い育ちを実現する方向となるような子育て支援を進めていくことが必要とされている。

 加えて、親が、子どもを育て、その喜びや生きがいを感じながらも、仕事やボランティア活動等、様々な形で社会とのかかわりを持つことで、子育てのほかにも様々な活動を通じて自己実現を果たせる環境を整備することも求められている。(「平成17年 中教審答申」より抜粋)

7.「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」など ー新 幼稚園教育要領(平成30年4月施行)ー

 幼稚園教育において育みたい資質・能力及び「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」

1 幼稚園においては、生きる力の基礎を育むため、この章の第1に示す幼稚園教育の基本を踏まえ、次に掲げる資質・能力を一体的に育むよう努めるものとする。

(1) 豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする「知識及び技能の基礎」

(2) 気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする「思考力、判断力、
  表現力等の基礎」

(3) 心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする「学びに向かう力、人間性等」


2 1に示す資質・能力は、第2章に示すねらい及び内容に基づく活動全体によって育むものである。


3 次に示す「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は、第2章に示すねらい及び内容に基づく活動全体を通して資質・能力が
 育まれている幼児の幼稚園修了時の具体的な姿であり、教師が指導を行う際に考慮するものである。

(1) 健康な心と体 幼稚園生活の中で、充実感をもって自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせ、見通しをもって行
  動し、自ら健康で安全な生活をつくり出すようになる。

(2) 自立心 身近な環境に主体的に関わり様々な活動を楽しむ中で、しなければならないことを自覚し、自分の力で行うために考
  えたり、工夫したりしながら、諦めずにやり遂げることで達成感を味わい、自信をもって行動するようになる。

(3) 協同性 友達と関わる中で、互いの思いや考えなどを共有し、共通の目的の実現に向けて、考えたり、工夫したり、協力した
  りし、充実感をもってやり遂げるようになる。

(4) 道徳性・規範意識の芽生え 友達と様々な体験を重ねる中で、してよいことや悪いことが分かり、自分の行動を振り返ったり、
  友達の気持ちに共感したりし、相手の立場に立って行動するようになる。また、きまりを守る必要性が分かり、自分の気持ち
  を調整し、友達と折り合いを付けながら、きまりをつくったり、守ったりするようになる。

(5) 社会生活との関わり 家族を大切にしようとする気持ちをもつとともに、地域の身近な人と触れ合う中で、人との様々な関わり
  方に気付き、相手の気持ちを考えて関わり、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に親しみをもつようになる。また、幼稚園内外
  の様々な環境に関わる中で、遊びや生活に必要な情報を取り入れ、情報に基づき判断したり、情報を伝え合ったり、活用した
  りするなど、情報を役立てながら活動するようになるとともに、公共の施設を大切に利用するなどして、社会とのつながりな
  どを意識するようになる。

(6) 思考力の芽生え 身近な事象に積極的に関わる中で、物の性質や仕組みなどを感じ取ったり、気付いたりし、考えたり、予想し
  たり、工夫したりするなど、多様な関わりを楽しむようになる。また、友達の様々な考えに触れる中で、自分と異なる考えが
  あることに気付き、自ら判断したり、考え直したりするなど、新しい考えを生み出す喜びを味わいながら、自分の考えをより
  よいものにするようになる。

(7) 自然との関わり・生命尊重 自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り、好奇心や探究心をもって考え
  言葉などで表現しながら、身近な事象への関心が高まるとともに、自然への愛情や畏敬の念をもつようになる。また、身近な
  動植物に心を動かされる中で、生命の不思議さや尊さに気付き、身近な動植物への接し方を考え、命あるものとしていたわり、
  大切にする気持ちをもって関わるようになる。

(8) 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚 遊びや生活の中で、数量や図形、標識や文字などに親しむ体験を重ねたり、標識
  や文字の役割に気付いたりし、自らの必要感に基づきこれらを活用し、興味や関心、感覚をもつようになる。

(9) 言葉による伝え合い 先生や友達と心を通わせる中で、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身に付け、経験し
  たことや考えたことなどを言葉で伝えたり、相手の話を注意して聞いたりし、言葉による伝え合いを楽しむようになる。

(10)豊かな感性と表現 心を動かす出来事などに触れ感性を働かせる中で、様々な素材の特徴や表現の仕方などに気付き、感じた
  ことや考えたことを自分で表現したり、友達同士で表現する過程を楽しんだりし、表現する喜びを味わい、意欲をもつように
  なる。 (平成29年3月 文科省「幼稚園教育要領」より抜粋)


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